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健康長寿食を目指して Vol.01

私が料理人になってから無力だな、と感じたことの一つに、その当時は与えられたもの、販売されているものしか手に入れることができないという現実でした。最初に感じたのが1965年頃だったと思います。厨房で大きな和牛のバラ肉をフライパンで焼いていた時、異様な匂いに気が付きました。何回も匂いを嗅ぎながらBHC或はDDTの匂いだと思いました。しかし、これしか無いし、これを料理しなくてはならない、ということに限界を感じたのです。

 私が中学生の当時、1956年頃のことですが学校で「赤い旗が立っている田んぼには近寄ってはならない」と注意がありました。田にはパラチオンという農薬がまかれていたのです。BHCやDDTは子供の頃、ノミやシラミの駆除と言って、頭からかけられていた身近な存在でしたが、稲の害虫駆除のため散布されていたものです。その稲わらが牛の飼料となり、稲わらに含まれていた農薬が牛の体内に入り、脂肪に蓄積されていたものと思われます。今に至るまで日本は世界で一番多く農薬を使用し、OECDの2002年の統計では1平方㎞当たりの使用量は1.5トン。スウェーデン、ポーランド、カナダ等は0.06から0.07トンですから桁外れに大量の農薬を使用しています。世界で大量に使用されていると思われるアメリカでさえ0.21トンです。7倍以上も使用していることになります。
 
 料理人でなくても日本の消費者、家庭でも、販売されているものしか手に入らないのではないでしょうか、農家ですら自分で栽培していない物は買わなければなりません。家庭菜園をしているから大丈夫と思っていても、化学肥料や農薬を使用していませんか、折角、自分で栽培する機会が与えられているのですから、自分の菜園は安心、安全であってほしいですね、大阪愛農食品センター在職中は有機農法や自然食品について語ることもありましたが、今はあまり語る機会がなくなりました。また、一般的にも40年ほど前、私などが食品公害に立ち向かって声を挙げていた時と違い、おとなしい感じがします。食品公害について語られるのを聞く機会が少ないし、その声も弱いように思えます。食糧危機やTPPの問題にしても、今は金を出せば買えるから、安いものが入ってくるようになれば有難いと思われているのでしょうか。
 
 国力とは自分の国土で暮らす自国民に充分な食糧を生産することの出来る力を持つことではないかと思います。自分の国で生産する力が最低限の力であり、その土台の上に全てのことが蓄積され、その結果が真の国力と思えるのです。
 
 「食」は生産、加工調理、食するという過程を経る事ですがこの三つのことについてこれからも書いてみたいと思っています。当たり障りのあることを書くかもしれませんが、ご容赦ください。
 
*OECDの資料は大和肥料株式会社さんの有機農業支援技術集からの引用です。
 
 
 

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