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健康長寿食を目指して

最近、現代型栄養失調という言葉を聞くようになりました。

今のところお金だけ払えば欲しいものを欲しいだけ手に入れることが出来るようになっています。世の中には食べ物があふれています。テレビの番組を見ていても食べること、グルメ情報が次から次と出てきます。毎日満腹するほど食べているにもかかわらず、栄養失調という言葉が出て来るとは何か、私たち日本人の食生活に問題があるのではないかと考えさせられます。

以前から現在の野菜は栄養価が低くなっていると言われていますが、何も改善されていないということです。私が読んでいる本「あなたの健康寿命は食で決まる」がありますが、改めて栄養について学ばせていただきました。現在の食生活では、エンプティカロリーと表現されていますが、カロリーはあるが栄養のない食べ物によって、カロリー過剰による肥満が増えているということです。

主要栄養素と言われるタンパク質、脂肪、炭水化物という三大栄養素は十分であっても、ビタミン、ミネラルを加えた五大栄養素の中のビタミン、ミネラル等が不足しているようです。酵素についてはテレビのコマーシャル等でもよく紹介されていますが、酵素の働きで主栄養素はエネルギーになり、ビタミンは酵素を助ける働きをし、私たちの体は60種類の元素から成り立ち、95%は酸素、炭素、水素、窒素でこの4つを除いた約5%をミネラルと呼ばれています。主要ミネラルとは100mg以上必要なもので、微量ミネラルはずっと少ない量で酵素の働きを助ける補助因子で、不足すると酵素が正常に働けなるのです。ミネラルはビタミンの働きに不可欠で、ミネラルが不足するとビタミンも十分に働けなくなります。ミネラルは体の中では作られません。植物は土中のミネラルを取り入れます。私たちはその野菜や果物を食べることにより、ミネラルをいただくことができます。

ところがこの野菜、果物を食べていても栄養不足と言われるのは、現代農業では化学肥料に頼る農法がほとんどです。化学肥料が育てると外観は立派にできますが、作物は弱く農薬を必要とします。施設園芸で生産されるものが多く、太陽のエネルギー、自然の温度変化などがコントロールされ、どうしても柔弱になり易いと思われます。遠隔輸送も考え、木の上で完熟する前に収穫するために、味の面でももう一つという感じがするのです。日本の国では有機農産物の市場占有率は微々たるもので、栄養豊富な農産物を入手するのが大変難しい現状です。

私は困難であっても有機農業を続けて行くつもりです。周りの農家が少しでも農薬を減らし、化学肥料に頼らない農業を行うことが出来るように、私も努力しないといけないと思っているのです。

やってきた食糧危機

1975年9月11日、当時私が勤めていた大阪クリスチャン・センターに於いて「複合汚染・講演と座談の時」という講演会を開催しました。講師はそのころ朝日新聞に連載されていた、有吉佐和子さんの小説「複合汚染」に取り上げられていた、奈良県五條市の医師、梁瀬義亮先生と愛農会創設者の小谷純一先生でした。梁瀬先生は講演の中で「人類は一度水の洪水で滅んだ歴史がある。ところが今は水の洪水ではなく、毒の洪水で滅びようとしている。この洪水から逃れるために第二のノアの箱舟を作っていただきたい」。と語られました。小谷先生は「遠からず食糧危機が来る。その第1は質的危機、農作物が農薬や化学肥料などで汚染され、安全性が脅かされている。第2は量的危機、人口が爆発的に増え、食料不足から餓死者が出る。第3は人的危機、農業従事者が減り食糧生産ができなくなる」。というものでした。あれから44年経った現在、もう一つの食糧危機が迫ってきました。第4の食糧危機とでもいうべき気象災害です。わが国では毎年のように台風や大雨によって、山々が崩れ河川が氾濫し洪水に見舞われ、多くの人命が失われ、農地も土砂にうずもれ農業ができなくなっています。今年の大雨による農業被害は一千億円を超えたと言われています。世界的に見ても大干ばつや山火事、大洪水と自然災害は世界各国で発生しています。
 
我が国の食料自給率は40%を割り、自国だけでは国民の生命を守ることが出来なくなっています。この上、食料輸入の相手国に災害が発生すれば、食料の調達が出来なくなります。世界の食糧備蓄は50日分くらいと以前は言われていました。今は何日分の備蓄がされているのでしょうか、わが国では米の減反政策がとられ、米の生産量は減ってきています。自然災害、獣害による農業被害、後継者不足、大きな原因は農業で生計が立てにくいことです。私が子供のころ農家は5反の田んぼがあれば生計が立っていました。農作業以外に山仕事や土方仕事などやって現金収入があり、十分暮らせていました。ところが今はどうでしょう。農業には金がかかりすぎます。トラクター、コンバインなど米つくりになくてはならない、籾摺り機、乾燥機など、農業機械はとても高価なものになっていて、農業収入で機械を購入するのは困難です。農作物の価格が安すぎます。この上海外から安い農産物が輸入されると太刀打ちできません。消費者の皆様も懐具合と相談して安い方へ流れるのが多いのではないでしょうか、今や、確実に食糧危機がそこまで迫って来ています。自ら守ることも考えなければなりません。少しでも空いた土地があればたとえ葱の1本でも植えていく、プランターで菜っ葉でも育ててみるとか、小さいことから実行してみることです。大きなことは出来なくても、小さいことの積み重ねが大事だと思います。貴方はこの食糧危機にどう立ち向かいますか。
 

カブトムシは従業員?

有機農法には堆肥は重要な資材です。4年前に樹木を選定した枝のチップを頂きました。180cm×360cmの囲いの中の約半分くらいの中に、150cmほどの高さまで米糠150㎏を混ぜ合わせて積み上げました。その後カブトムシが大量に発生しました。切り返しの時スコップですくうと10匹くらいいました。全体では1000匹を超すのではないかと思うほどの数です。毎年野菜の苗を移植したとき株元に少量ずつ置いていますが、今年はその堆肥には樹木の固形物はなくなり、よく見るとカブトムシが食べて糞になったものでした。カブトムシが木くずをかみ砕いて食べてその結果素晴らしい堆肥になっていたのです。

9月中頃メスのカブトムシが数匹来ていましたので産卵していたのかもしれません。昨年頂いた新しい木くずを運び込んで用意をしました。カブトムシに堆肥を作るように指示したことはありませんが、毎年大量のカブトムシが堆肥の製造をしてくれています。しかも無給です。人間が作るとなると茸類の菌床におがくずを使用しますが、茸の栽培が終わった廃オガ屑でしょう。カブトムシの場合、体内を通して出てきたものでオガ屑くらいの大きさになっていて、すぐ土に混ぜても何の害もありませんし使いやすい肥料になっています。

自然には害をなす虫もいればカブトムシのように肥料つくりに励んでくれている虫もいます。私から見れば実によく働く、堆肥製造部門の従業員のような存在です。ただ今年は猪のために大量のカブトムシが食べられ犠牲になりました。今はワイヤーメッシュで入り口を塞ぎ、猪が侵入しないように防ぎました。今年産卵したのでまたカブトムシが木くずを食べて、元気に育ってくれればと願っているところです。

槇本清武

健康法はいろいろあるけれど

このところテレビでは健康に関する番組が増え、NHKでも民放テレビでも、あれがいい、これがいい、これさえ食べていれば何の心配もない、これさえ食べていれば健康になれる。と言わんばかりのものさえあります。コマーシャルでも一杯のOOさえ飲んでいれば1日必要量の野菜の栄養が補給できる。というようなことも言われています。しかし、何の労もせず座していてそのようなものが手に入るものだろうか?と思います。

 
私も農場で作業をしていますといろんな方が話しかけてこられます。ある方が、「健康にはお金はかからない」といわれましたが、その方は私の栽培しているジャンボニンニクを分けて欲しいと言って買ってくださいました。「これで黒にんにくを作るのだ」と言われました。あまり高額なものでなくても身近にあるもので健康が保たれると私も思います。我が家では家内がもう40年も玄米食を続けています。私も当初は玄米を食べていましたが、一膳食べるのに少なくとも40分はかかっていました。一口100回から120回は噛んでいました。正食協会で教えられたとおり忠実に実行していたのです。ところが毎日忙しく食事の時間を多く持つことができなくなり、私は約8年ほどで玄米をやめ、分搗き米に麦などを入れて食べるようになりました。そのころ犬(ポチ)を飼っていました。ポチの餌には必ず米糠を混ぜて食べさせていました。ポチは白いご飯は食べませんでした。米糠をかけてやれば食べます。白い毛のポチは毛の色がきれいで、油分のせいか光っていました。

 
私はもう3年くらいになりますか、毎日米糠を食べています。一食に大匙1杯の米糠を食べます。糠は底の分厚い大きな鍋で弱火で15分程度煎ります。煎り上げて容器に移して温度を計りますと120℃くらいになっています。少し色がつくくらいで香ばしい香りがします。朝は納豆に混ぜて食べます。昼、夜はご飯に振りかけて食べますが、おかずに混ぜても食べやすいです。食べ始めて2、3日で気が付いたのは足が軽くなったことです。他にはお通じがとか目に見える形で変化があったことです。(個人の感想です)私のところではもう15年、農薬も化学肥料も一切使用せず、米も黒大豆も野菜も育てています。米糠をただ農業用だけに使うのはもったいないし、自分の栽培した米の糠ですから人間が食べるほうがよいのではと思って、精米したらすぐに煎って小袋に詰め冷凍保存しています。

 
私も米糠を食べることを進めるものですから、私の周りの方々も米糠ファンが増え、皆様から喜ばれています。今、木村式農法の米糠は米よりも高いと聞いたことがあります。糠は米の10%ほどしか取れませんし、有機栽培や自然栽培のものはわずかしかありませんので、希少価値が高いからでしょう。人間の食用にせず他の用途に回していたものが、これほど健康増進に役立つことであれば、放っておくことはないと思います。いろいろな健康法がありますが、身近なところから見直してみるのもいいのではないかと思っています。

健康長寿食を目指して Vol.01

私が料理人になってから無力だな、と感じたことの一つに、その当時は与えられたもの、販売されているものしか手に入れることができないという現実でした。最初に感じたのが1965年頃だったと思います。厨房で大きな和牛のバラ肉をフライパンで焼いていた時、異様な匂いに気が付きました。何回も匂いを嗅ぎながらBHC或はDDTの匂いだと思いました。しかし、これしか無いし、これを料理しなくてはならない、ということに限界を感じたのです。

 私が中学生の当時、1956年頃のことですが学校で「赤い旗が立っている田んぼには近寄ってはならない」と注意がありました。田にはパラチオンという農薬がまかれていたのです。BHCやDDTは子供の頃、ノミやシラミの駆除と言って、頭からかけられていた身近な存在でしたが、稲の害虫駆除のため散布されていたものです。その稲わらが牛の飼料となり、稲わらに含まれていた農薬が牛の体内に入り、脂肪に蓄積されていたものと思われます。今に至るまで日本は世界で一番多く農薬を使用し、OECDの2002年の統計では1平方㎞当たりの使用量は1.5トン。スウェーデン、ポーランド、カナダ等は0.06から0.07トンですから桁外れに大量の農薬を使用しています。世界で大量に使用されていると思われるアメリカでさえ0.21トンです。7倍以上も使用していることになります。
 
 料理人でなくても日本の消費者、家庭でも、販売されているものしか手に入らないのではないでしょうか、農家ですら自分で栽培していない物は買わなければなりません。家庭菜園をしているから大丈夫と思っていても、化学肥料や農薬を使用していませんか、折角、自分で栽培する機会が与えられているのですから、自分の菜園は安心、安全であってほしいですね、大阪愛農食品センター在職中は有機農法や自然食品について語ることもありましたが、今はあまり語る機会がなくなりました。また、一般的にも40年ほど前、私などが食品公害に立ち向かって声を挙げていた時と違い、おとなしい感じがします。食品公害について語られるのを聞く機会が少ないし、その声も弱いように思えます。食糧危機やTPPの問題にしても、今は金を出せば買えるから、安いものが入ってくるようになれば有難いと思われているのでしょうか。
 
 国力とは自分の国土で暮らす自国民に充分な食糧を生産することの出来る力を持つことではないかと思います。自分の国で生産する力が最低限の力であり、その土台の上に全てのことが蓄積され、その結果が真の国力と思えるのです。
 
 「食」は生産、加工調理、食するという過程を経る事ですがこの三つのことについてこれからも書いてみたいと思っています。当たり障りのあることを書くかもしれませんが、ご容赦ください。
 
*OECDの資料は大和肥料株式会社さんの有機農業支援技術集からの引用です。
 
 
 

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